今から始める完走への道

1.体調管理・メディカルチェックについて

(公財)東京陸上競技協会 医事委員長

三橋 敏武 医師 監修

昨今のマラソンブームによりランナーの数は増加傾向にあります。ランニングは気軽に始めやすいスポーツですが、マラソンは危険なスポーツでもあります。特に本番になると、体調不良を感じながらも頑張りすぎてしまい、それが事故を招く要因になる可能性があります。大会に出場する際は、普段からの準備はもちろんのこと、自分の年齢や体調を考え、安全には十分に注意してください。

メディカルチェックを受けましょう


マラソン中の心停止の原因はほとんどが虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)です。虚血性心疾患はメディカルチェックで発見されることがあります。マラソン中の心疾患による事故を減らすために、ぜひメディカルチェックを受けましょう。
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、1年間の死因別死亡総数では、心疾患(高血圧性を除く)は悪性新生物(がん)に次ぐ2番目に多い数字でした。
また、心疾患の場合、肥満、高血糖、高血圧、高脂血症の危険因子がない人の危険度を1とすると、危険因子を1つ持っている場合は5.1倍、2つ持っている場合は5.8倍、3~4個持っている場合35.8倍になるという報告があります。

申込時の健康チェックリスト


下記の項目(1~10)のうち1つでも当てはまる項目がある場合、かかりつけ医に相談してください。

  • 心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、心筋症、弁膜症、心不全、先天性心疾患、不整脈、大動脈瘤など)の診断を受けている、もしくは治療中である。
  • 突然、気を失ったこと(失神発作)がある。
  • 運動中に胸痛、ふらつきを感じたことがある。
  • 血縁者に‘いわゆる心臓マヒ’で突然に亡くなった方がいる(心臓突然死)。
  • 最近1年以上、健康診断を受けていない。
  • 60歳以上の男性である。
  • 血圧が高い(高血圧)。
  • 血糖値が高い(糖尿病)。
  • LDLコレステロールや中性脂肪が高い(脂質異常症)。
  • たばこを吸っている(喫煙)。

かかりつけ医とは、皆さんの健康や体調を管理してくれる身近なドクターです。
かかりつけ医をきちんと決めて、各種の検査やレース参加などについて相談しましょう。

(公財)日本陸上競技連盟 医事委員会

2013. 4. 11 作成、2024. 11. 30 改定

2.目標設定とトレーニングについて

マラソンは非常に過酷なスポーツです。無計画に何となく出場してしまっては、完走するどころか体調を損ねてしまう場合もあります。
そんなことにならないように、まずは目標を決め、それを達成するための計画を立てることが重要です。


MINATOシティハーフマラソンの制限時間は2時間30 分です。7分6秒/kmで走れば完走できます。完走を目指している方は日々のランニングでどのくらいのペースで走れているのか確認しましょう。
大会の期日から逆算して、まずは1km、5km、10km、というように少しずつレベルアップできる練習計画を立てましょう。トレーニングをする際は、以下のタイム表を参考にしてください。

完走目安タイム表

※スマートフォンでは横スクロールしてご覧ください

距離1km5km10km15km20kmフィニッシュ
タイム7分06秒35分32秒1時間11分05秒1時間46分38秒2時間22分11秒2時間30分00秒
規則的に走る 毎日走る必要はありませんが、3日連続で休まないのがポイントです。
走る距離、
回数を増やしていく
スピードより、走る距離や回数を少しずつ増やし、より長くたくさん走れるようにします。
持続走を中心に 練習は、時間走(一定の時間走る、たとえば30分間走る)や距離走(一定の距離を走る、たとえば5km走る)といった「持続走」を中心に進めていきます。
走る場所を工夫する、
コースに変化をつける
自宅周辺や通勤経路を利用して、変化のあるジョギングコースをいくつか設定しましょう。
また、いつも舗装路ばかりでは故障が心配。公園の芝生や土の走路を利用したり、時には野山を駆けるトレイルランニングへの挑戦もおすすめです。走る世界が広がっていきます。
練習計画を立てる 1週間、あるいは1カ月の練習計画を立ててください。張り切りすぎて計画倒れにならないように、無理のないプランにすることがコツ。少しずつ着実に達成していく、その過程が重要です。
計画の中にランニング大会への出場を入れると、それは「目標」にもなります。目標があれば、トレーニングにも自然と気が入るもの。走り始めて2~3カ月経つ頃に、5kmぐらいのランニング大会を組み込むのがよいでしょう。いつもと違ったランニングの楽しさに気づくはずです。